ホンダの新型SUV「WR-V」について、「WR-Vはひどい」という評価を目にして、購入をためらってはいませんか?
インターネットの口コミや動画サイトでは内装や装備に関する厳しい意見が見られますが、その一方で実際の販売は好調に推移しています。たしかに、WR-Vにはいくつかのデメリットが存在するのは事実です。しかし、なぜそのような仕様になっているのか、この車の成り立ちとコンセプトを深く理解すれば、その評価は180度変わるかもしれません。
最近では、ユーザーの声に応えて質感の向上を図った特別仕様車も登場し、選択の幅はさらに広がっています。
この記事では、WR-Vがひどいと言われる理由を一つひとつ客観的に掘り下げ、その上で見えてくる本来の魅力と、ライバルを圧倒するほどのコストパフォーマンスについて徹底的に解説します。
- WR-Vがひどいと言われる具体的な理由
- 価格を抑えるための割り切った装備内容
- ライバル車と比較した際のメリット・デメリット
- 購入後に後悔しないための判断ポイント
購入前に知りたいWR-Vがひどいと言われる理由

- 指摘される内装や装備の欠点
- 4WDやe:HEVがないデメリット
- ライバル車と比較した燃費性能
- 先進安全装備の機能制限
- ユーザーが不満を感じるポイント
指摘される内装や装備の欠点
WR-Vが「ひどい」と評価される最も大きな理由の一つが、内装の質感と装備の簡素さにあります。結論から言うと、これは約210万円からという衝撃的な低価格を実現するため、ホンダが意図的にコストを最適化した結果です。すべてを盛り込むのではなく、「必要なもの」と「割り切るもの」を明確に分けた設計思想の表れと言えます。
具体的には、ダッシュボードやドアトリムの広範囲に、硬質なプラスチック素材(ハードプラ)が使用されています。兄貴分にあたるヴェゼルでは、乗員が触れやすい部分に手触りの良いソフトパッドを効果的に配置しているため、2台を直接比較してしまうと、どうしてもWR-Vの質感が物足りなく感じてしまうかもしれません。特にインパネ周りは運転中常に目に入る部分なだけに、この質感を許容できるかが最初の判断ポイントになります。
現代の車として物足りない?快適装備の省略
近年の新型車では「あって当たり前」になりつつある快適装備が、WR-Vではいくつか見送られています。日々の運転の快適性に直結するため、不満点としてSNSなどでも頻繁に挙げられています。
- 電動パーキングブレーキ&オートブレーキホールド:信号待ちや渋滞時にブレーキペダルから足を離しても停車状態を維持してくれる、疲労軽減に絶大な効果を発揮する機能です。しかし、WR-Vはコスト面で有利な従来ながらの足踏み式パーキングブレーキを採用。このため、オートブレーキホールド機能も搭載されていません。
- シートヒーター:冬場のドライブの快適性を大きく左右するシートヒーターが、最上級グレードの「Z+」ですら標準装備されておらず、メーカーオプション設定もありません。軽自動車のN-BOXですら装備されているグレードがあることを考えると、この点は大きなマイナスポイントと捉える方が多いようです。
ただ、ホンダもこうしたユーザーの声を座視しているわけではありません。発売からわずか1年後の2025年3月に行われた一部改良では、中級グレード「Z」と最上級グレード「Z+」のインパネ下部やドアライニングにソフトパッドを追加し、質感の向上を図っています。こうした迅速な対応は、ホンダ自身も初期モデルの質感が課題であったと認識している証拠と言えるでしょう。
言ってしまえば、WR-Vの内装は「価格相応」の側面が強いです。しかし、ただコストを削っただけではありません。助手席前のインパネガーニッシュにピアノブラック調の加飾パネルを配置したり、シートにステッチ(縫い目)を模したデザインを取り入れるなど、視覚的な質感を高く見せるための工夫も随所に見られます。すべてを割り切っているわけではなく、限られたコストの中で最大限の努力をしているのです。
4WDやe:HEVがないデメリット

WR-Vのパワートレインと駆動方式のラインナップは、1.5Lガソリンエンジンの2WD(FF)モデルのみという、近年のSUVとしては異例なほどシンプルな構成です。この大胆な割り切りが、一部のユーザーにとっては購入をためらう大きなデメリットとなっています。
e:HEV(ハイブリッド)の設定がない
最大のデメリットは、ホンダ独自の高効率2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」が選択できないことです。e:HEVは優れた燃費性能はもちろん、モーター駆動を主体とした静かで滑らかな走行フィールが大きな魅力です。このシステムを求めるユーザーにとって、WR-Vは残念ながら選択肢から外れてしまいます。ライバルであるトヨタのヤリスクロスやカローラクロスがハイブリッドを販売の主力としている現状を考えると、この点は明確な弱点です。
4WDの設定がない
SUVというカテゴリーでありながら4WDの設定がないことも、「ひどい」と言われる要因の一つです。言うまでもなく、降雪地域に住んでいる方や、スキー・スノーボードなどのウィンタポーツを趣味にしている方にとって、4WDは生活やレジャーに必須の装備です。
また、キャンプなどで未舗装の林道を走る機会があるアウトドア派のユーザーにとっても、悪路走破性を高める4WDは心強い存在。これが選択できないため、WR-Vは本格的な悪路走行を想定しない「シティ派SUV」、あるいは一部で「なんちゃってSUV」と揶揄されることもあります。
なぜラインナップをここまで絞ったのか?
その理由は、WR-Vがインドで開発・生産され、世界の新興国市場をメインターゲットとする「グローバルモデル」である点にあります。日本ではハイブリッドや4WDの需要が高いですが、インドをはじめとする主なターゲット市場では、車両価格が安く、構造がシンプルでメンテナンス性に優れるガソリンFF車が販売の主流です。その基本設計を日本市場に導入することで、部品や生産ラインの共通化を図り、驚きの低価格を実現しているのです。
ライバル車と比較した燃費性能
WR-Vの燃費性能は、現代のガソリンエンジン車として決して悪い数値ではありません。しかし、ハイブリッド車が市場の半数以上を占める現在の日本のコンパクトSUV市場においては、どうしても見劣りしてしまうのが実情です。
WR-Vのカタログ燃費(WLTCモード)は、グレードにより16.2km/L~16.4km/Lとなっています。これは、同じ1.5Lガソリンエンジンを搭載する兄貴分のヴェゼル(17.0km/L)と比較しても大きな差はなく、日常の通勤や買い物といったシーンでは十分な経済性を発揮します。ただし、ライバルとなる他社モデルと比較すると、その差は歴然です。
車種 | パワートレイン | 駆動方式 | WLTCモード燃費 |
---|---|---|---|
ホンダ WR-V | 1.5L ガソリン | 2WD | 16.2~16.4km/L |
トヨタ ヤリスクロス | 1.5L ガソリン | 2WD | 17.6~19.8km/L |
トヨタ ヤリスクロス | 1.5L ハイブリッド | 2WD | 30.2~30.8km/L |
日産 キックス | 1.2L e-POWER | 2WD | 23.0km/L |
スズキ フロンクス | 1.2L マイルドハイブリッド | 2WD | 28.5km/L |
このように、特にヤリスクロスのハイブリッドモデルと比較すると、燃費性能には倍近い差が生じています。ガソリン価格の高騰が続く昨今、毎月の燃料代を少しでも抑えたい方や、環境性能を重視する方にとって、WR-Vは最適な選択とは言えないかもしれません。
一方で、WR-Vが搭載する1.5Lの「L15D型」エンジンは、ホンダらしく高回転まで非常にスムーズに吹け上がるフィーリングの良さに定評があります。トランスミッションのCVTも、アクセルの踏み込みに応じてエンジン回転数がリニアに上昇するよう緻密に制御されており、ダイレクトな加速感を味わえます。燃費という絶対的な数値だけでなく、アクセルを踏むのが楽しくなるような「運転の気持ちよさ」という、数値化しにくい価値観も判断材料に加えることが大切です。
先進安全装備の機能制限
WR-Vには、ホンダの先進安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」が全グレードに標準装備されています。ミリ波レーダーと単眼カメラで車両前方の状況を認識し、衝突被害軽減ブレーキ(CMBS)や車線維持支援システム(LKAS)など、13の多彩な機能で安全運転をサポートします。(出典:本田技研工業株式会社 Honda SENSING 公式サイト)
「ひどい」「時代遅れ」という評価に繋がっているのは、その機能の一部に現代の基準から見ると明らかな制限がある点です。
最も大きな違いとして挙げられるのが、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)の機能です。ACCは、高速道路などでアクセルやブレーキを操作することなく、設定した車速で先行車に自動で追従走行してくれる非常に便利な機能です。
しかし、WR-Vに搭載されるACCは作動下限速度が約30km/hに設定されているタイプなのです。そのため、高速道路での巡航は楽になりますが、渋滞時のような30km/h以下のノロノロ運転には対応できず、ドライバー自身でのブレーキ操作が必要になります。
主要な運転支援機能 | WR-V | ヴェゼル |
---|---|---|
渋滞追従機能付きACC(0km/hから作動) | × (30km/h以上で動作) | ◯ |
ブラインドスポットインフォメーション(死角の車両を警告) | × | ◯ |
トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能) | × | ◯ |
このように、兄貴分のヴェゼルに搭載されている「渋滞追従機能付きACC」や、車線変更時に死角にいる車両の存在を知らせる「ブラインドスポットインフォメーション」などは備わっていません。これらの高度な機能は、前述の電動パーキングブレーキとシステムが連動して実現されるものが多く、WR-Vがコストを優先して足踏み式パーキングブレーキを採用していることが、機能制限の根本的な理由となっています。
もちろん、基本的な安全性能は十分に確保されています。ただ、最新の運転支援機能を期待して購入すると、「思ったよりも楽ができない」と感じてしまう可能性があります。特に、渋滞の多い都市部での利用や、帰省などで長距離運転の機会が多い方は、この機能差を正しく理解しておくことが重要です。
ユーザーが不満を感じるポイント

これまで挙げてきた主要な欠点の他にも、ユーザーが日常の様々なシーンで「少し残念」「安っぽい」と感じる可能性のある、細かいながらも重要なポイントがいくつか存在します。
後席を倒した際に大きな段差ができる
WR-Vは、ホンダの多くのコンパクトカー(フィット、ヴェゼルなど)で採用されている特許技術「センタータンクレイアウト」を採用していません。これは通常後席下にある燃料タンクを前席下に配置する技術で、後席足元や荷室の空間効率を劇的に高めることができます。
この技術がないため、WR-Vで後席の背もたれを前に倒して荷室を拡大した際に、荷室の床が完全なフラットにならず、10cm以上の大きな段差ができてしまいます。長い荷物を積む際に安定しなかったり、流行りの車中泊を考えている方にとっては、この段差は致命的なデメリットになるでしょう。
ただし、この段差を埋めてフラットな空間を作り出す純正アクセサリー「ラゲッジボード」(33,000円)も用意されているので、用途によっては追加投資で解決可能です。
リアウインカーとバックランプが昔ながらの豆電球
ヘッドライトやテールランプ(尾灯・制動灯)には省電力で長寿命なLEDを採用し、現代的な精悍なルックスを実現しています。しかし、コストダウンの影響は細部にも及んでおり、リアのウインカー(方向指示器)とバックランプは昔ながらのハロゲンバルブ(豆電球)です。
機能的には何ら問題ありませんが、点灯した際の光り方がLEDと異なるため、見た目の統一感がなく、古臭い印象を受けてしまう方もいるようです。交換は比較的容易なため、気になる方は市販のLEDバルブに交換するのも一つの手です。
これらのポイントは、一つひとつが車の購入を断念させるほどの決定的な欠点とまでは言えないかもしれません。しかし、こうした細かい部分の積み重ねが、「WR-Vはひどい」「全体的に安っぽい」という漠然としたネガティブな印象に繋がっている可能性があります。
購入を検討する際は、カタログスペックだけでなく、販売店で実車に触れ、こうした細部が自分の価値観や使い方において許容範囲内かどうかをしっかりと確認することをおすすめします。
WR-Vはひどい、その評価を覆す割り切りの魅力

- 割り切ったコンセプトと戦略的な価格
- 好調な売れ行きが示す市場の評価
- 質感を高めた特別仕様車の選択肢
- クラストップレベルの荷室と居住性
- 兄貴分ヴェゼルとの明確な棲み分け
- 結論:WR-Vはひどい車ではない
割り切ったコンセプトと戦略的な価格
ここまで解説してきたWR-Vの数々のデメリット。それらはすべて、「割り切り」という明確なコンセプトに集約されます。そして、その割り切りの先にある最大の魅力こそが、ライバルを圧倒する驚異的なコストパフォーマンスと、市場に衝撃を与えた戦略的な価格設定です。
WR-Vの価格は、最もベーシックな「X」グレードで2,098,800円(税込)からスタートします。最上級グレードの「Z+」でも2,489,300円(2024年発売時)と、全グレードが250万円以下に収められています。これは、コンパクトSUV市場で絶大な人気を誇るトヨタ ヤリスクロスのガソリンモデル(1,907,000円~)と価格帯は近いですが、WR-Vの価値は単純な価格の安さだけではありません。
車種 | グレード | 全長×全幅×全高 | 価格(税込) |
---|---|---|---|
ホンダ WR-V | X | 4,325×1,790×1,650mm | 2,098,800円 |
ホンダ WR-V | Z+ | 4,325×1,790×1,650mm | 2,489,300円 |
トヨタ ヤリスクロス | GX (ガソリン) | 4,180×1,765×1,590mm | 1,907,000円 |
トヨタ ヤリスクロス | Z Adventure (ガソリン) | 4,200×1,765×1,590mm | 2,453,000円 |
ホンダ ヴェゼル | G (ガソリン) | 4,330×1,790×1,580mm | 2,399,100円 |
注目すべきは、WR-Vがヤリスクロスよりも明らかに一回り大きなボディサイズである点です。全長は145mm、全幅は25mm、全高は60mmも大きく、特に分厚いボディと高い全高がもたらす見た目の迫力や存在感では、WR-Vが完全に格上に見えます。より大きく立派なSUVが、実質的に同等の価格帯で手に入る。この「クラスレスな満足感」こそ、WR-Vの最大の武器なのです。
つまり、WR-Vは「最新の快適装備や燃費の良いハイブリッドは必ずしも必要ない。その分、広くて格好良い、所有する満足感の高いSUVをできるだけ安く手に入れたい」という、これまで市場が見過ごしてきたユーザー層のニーズに、的確に応えるために開発された戦略的な車なのです。このコンセプトを理解すれば、「ひどい」とされた数々の欠点が、むしろ潔い「選択と集中」の結果であると見えてくるはずです。
好調な売れ行きが示す市場の評価
インターネット上のレビューでは厳しい意見も散見されますが、実際の販売実績はWR-Vの「割り切り」コンセプトが、多くの一般ユーザーに強く支持されていることを明確に証明しています。
WR-Vは2024年3月22日の発売以来、計画を大幅に上回る好調な受注を記録し続けています。ホンダの公式発表によると、発売後約1ヶ月の2024年4月22日時点で、月間販売計画3,000台の4倍以上となる約13,000台の受注を達成しました。(出典:本田技研工業株式会社 ニュースリリース)その後も勢いは衰えず、多くの月でコンパクトSUV販売台数ランキングの上位に名を連ねています。
さらに注目すべきは、その購入者層の内訳です。
- ホンダ車からの乗り換えが少ない:WR-Vの購入者のうち、約半数が他メーカー車からの乗り換え、または初めて車を購入する新規の顧客です。これは、既存のヴェゼルなどとは異なる新たな魅力で、これまでホンダに興味のなかった層の開拓に成功していることを示しています。
- 幅広い年齢層からの支持:購入者は、初めてのマイカーとして選ぶ20~30代のミレニアル世代から、子育てを終えて大きなミニバンからのダウンサイジングを検討する50~60代の夫婦まで、非常に多岐にわたります。ホンダの調査では、特にヴェゼルよりも女性ユーザーの比率が高いという興味深いデータも明らかになっています。
これらの事実は、一部の自動車評論家やコアな車好きから批判されつつも、WR-Vが「この価格で、このサイズとデザイン、そしてホンダブランドの信頼性が手に入るなら、装備の簡素化は全く問題ない」と判断するサイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)に、熱烈に支持されていることを物語っています。市場は、WR-Vの本質的な価値を正しく評価していると言えるでしょう。
質感を高めた特別仕様車の選択肢

「価格とコンセプトは非常に魅力的だが、やはり毎日触れる内装の安っぽさがどうしても気になる…」そんな声に応えるため、ホンダはWR-Vの商品力向上にも迅速に着手しています。
2025年3月には、発売からわずか1年という異例の速さで一部改良モデルを投入。さらに、内外装を精悍なブラック基調でコーディネートし、質感を大幅に引き上げた特別仕様車「BLACK STYLE(ブラックスタイル)」を中級グレード「Z」と最上級グレード「Z+」に追加設定しました。
BLACK STYLEの主な特別装備
【エクステリア】
- ベルリナブラック塗装の17インチアルミホイール
- クリスタルブラック・パール塗装のアウタードアハンドル
- クリスタルブラック・パール塗装の電動格納式リモコンドアミラー
- クリスタルブラック・パール塗装のシャークフィンアンテナ
【インテリア】
- ブラックステッチ入りの本革巻ステアリングホイール
- ピアノブラック調のステアリングガーニッシュ
- ピアノブラック調のエアコンアウトレットガーニッシュ
- ピアノブラック調のドアライニングガーニッシュ
これらの装備により、標準モデルのやや素朴な印象は一変し、スポーティで上質な雰囲気を手に入れています。

今後のさらなる展開にも期待
さらに、2025年夏頃には、最上級グレード「Z+」にブラウンのプライムスムース(しっとりとした質感の合成皮革)シートを採用した、より上質感を高めた仕様も発売が予定されています。このように、ホンダはユーザーの声を真摯に受け止め、継続的に商品力を高めていく姿勢を明確にしています。初期モデルの欠点や不満点が、今後の年次改良や新たな特別仕様車の登場で解消されていく可能性は十分にあります。
これらの多彩な選択肢が増えたことで、「価格」と「質感」のバランスを、ユーザー自身の予算や価値観に応じてより柔軟に選べるようになりました。単純に「安いだけの車」で終わらない、多様なニーズに応える懐の深さもWR-Vの新たな魅力となっています。
クラストップレベルの荷室と居住性
WR-Vの数ある魅力の中でも、ライバル車に対して明確なアドバンテージを誇るのが、そのボディサイズを最大限に活かした広大な室内空間とクラストップレベルの荷室容量です。ここは、WR-Vの最も評価されるべきポイントと言っても過言ではありません。
WR-Vの荷室容量は、5名乗車時でクラストップレベルの458Lを確保しています。この数値がどれだけ優れているかは、ライバルと比較すると一目瞭然です。
- ホンダ WR-V: 458L
- ホンダ ヴェゼル: 404L
- トヨタ ヤリスクロス: 390L
- トヨタ カローラクロス: 487L(※パンク修理キット搭載時)
- 日産 キックス: 423L
カローラクロスは例外的に広いですが、ヤリスクロスやヴェゼルといった直接のライバルを大きく上回ります。
見た目の数値だけでなく「使える」広さ
カタログ上の容量が大きいだけでなく、荷室の床面が低く、開口部の形状がスクエア(四角い)で広いため、非常に荷物の積み下ろしがしやすい実用的な設計になっています。
例えば、大型のスーツケースや折りたたみ自転車、A型ベビーカーなど、かさばる荷物も楽々と積載することが可能です。この使い勝手の良さは、ファミリー層やアウトドアレジャーを楽しむユーザーにとって大きなメリットとなります。
後席の居住性も特筆すべき点です。ホイールベース(前輪と後輪の距離)をライバルより長く取っている恩恵で、後席の膝周りのスペースにはクラストップレベルのゆとりがあります。また、スクエアなボディ形状のため頭上空間も広く、大人の男性が座っても全く窮屈さを感じません。
ドアの開口部も広く設計されており、チャイルドシートの設置や子供の乗り降りもスムーズに行えます。さらに、このクラスのSUVでは省略されがちな後席用のエアコン吹き出し口(リアベンチレーション)が全グレードに標準装備されており、後席に乗る人の快適性は非常に高いレベルにあります。
最新の電子装備や華やかな内装の質感ももちろん大切です。しかし、車としての最も基本的なパッケージング、つまり「人を快適に乗せ、多くの荷物を安全に運ぶ」という性能において、WR-Vは同価格帯のライバルを凌駕する実力を持っています。この揺るぎない実用性の高さこそが、日々のカーライフを豊かにするWR-Vの最大の価値なのです。
兄貴分ヴェゼルとの明確な棲み分け

WR-Vを正しく評価する上で絶対に欠かせないのが、同じホンダのコンパクトSUVであり、長年このクラスのベンチマークであり続けるヴェゼルとの関係性です。一見すると、同じメーカーの同じクラスで顧客を奪い合う「共食い」状態に陥るように思えますが、実際には2台のキャラクターは全く異なり、ホンダは見事な棲み分けを行っています。
言ってしまえば、この2台は同じ「コンパクトSUV」という枠の中にありながら、ユーザーに提供する価値が全く異なる、似て非なる存在なのです。
項目 | WR-V | ヴェゼル |
---|---|---|
提供価値 | タフさ、広さ、圧倒的な価格 | デザイン性、先進性、上質な走り |
デザイン | スクエアで力強い本格SUVスタイル | 流麗で都会的なクーペスタイル |
パワートレイン | 1.5L ガソリン (FFのみ) | 1.5L ガソリン / e:HEV (FF/4WD) |
主要装備 | 基本的な装備に厳選(足踏み式PB) | 電動PB、渋滞追従ACCなど先進装備が充実 |
荷室容量 | 458L | 404L |
価格帯(ガソリン車) | 209万円~ | 239万円~ |
このように、ホンダはユーザーの多様化するライフスタイルや価値観に応えるため、2つの明確に異なる個性を持つSUVをラインナップしています。
あなたはどっち派?ライフスタイル別おすすめ
- WR-Vがおすすめな人:とにかく初期費用を抑えたい、広い荷室と後席は絶対に譲れない、ゴツゴツしたタフなデザインが好き、ハイブリッドや4WD、最新の運転支援機能にはこだわらない。
- ヴェゼルがおすすめな人:燃費の良いハイブリッドが欲しい、渋滞でも楽な運転支援機能は必須、内装の質感やデザイン性にこだわりたい、洗練された都会的なスタイルが好き。
WR-Vの「ひどい」と言われる部分は、裏を返せばヴェゼルが得意とする領域であり、明確な差別化点でもあります。どちらが優れているか、ではなく、自分の価値観や車の使い方、そして予算に合うのはどちらなのかを冷静に見極めることが、購入後に後悔しないための最も重要な鍵となります。

結論:WR-Vはひどい車ではない
- WR-Vがひどいと言われる主な理由は内装と装備の簡素化にある
- これらは209万円からという戦略的価格を実現するための意図的な割り切り
- パワートレインは1.5LガソリンFFのみでe:HEVや4WDは選択不可
- 降雪地域在住の方や燃費を最優先するユーザーには明確なデメリットとなる
- ACCは搭載するが渋滞追従機能はなくヴェゼルより運転支援機能が制限される
- ハードプラを多用した内装は価格相応だが質感向上の工夫もみられる
- 2025年の一部改良や特別仕様車「BLACK STYLE」で質感は改善されつつある
- ライバルHV車に比べ燃費は見劣りするがガソリン車ならではの気持ち良い走りも魅力
- 最大の強みはクラスを超えた広大な室内とクラストップレベルの458L大容量荷室
- リアベンチレーションを全車標準装備するなど後席の快適性は非常に高い
- 実用性を重視するファミリー層やアウトドアレジャーを楽しむユーザーには大きなメリット
- 販売は計画を上回る好調さで市場はこの割り切ったコンセプトを評価している
- 先進性や上質さのヴェゼル、実用性と圧倒的価格のWR-Vという明確な棲み分けがある
- すべてのニーズを満たす万能車ではないが特定のユーザーには最適解となり得る一台
- 購入前には必ず実車で内装の質感や後席を倒した際の段差などを確認することが重要
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